その伝え方で大丈夫?勤怠連絡の罠
昨今ではリモート環境の普及や、業務状況に合わせたフレックスタイム制の導入などで、勤務形態が柔軟になってきているように感じられます。一方で、個人のニーズに合わせていくと、周囲とのコミュニケーションが不足しがちになることも。そうなると必然的に相手や自分の勤務状況が見えなくなってしまうため、苦労されている方も多いのではないでしょうか。
今回は、陥りがちな勤怠確認の危険な落とし穴について紹介いたします。
◾️働き方が見えない時代、勤務時間の共有はどうすればいいの?
リモートワークやフレックス制度が普及したことで、働き方は柔軟になりました。しかしその一方で、進捗管理やトラブルの共有が難しくなったのも事実です。
チャットの連絡はいつ確認されるかわからない、スケジュールにはない予定が立て込んでいるのか、会議通知に反応がない……なんてことは、忙しい業務の中で度々発生する問題のように思われます。
また、対面での会話であれば表情や声のトーンといったものから、相手の感情を読み取ることができるのですが、文章では読み手と書き手で受け取り方がガラッと変わってしまうこともあります。そんな時に必要になってくるのが勤怠連絡です。
今日は働いているのか、何時ごろであれば連絡可能なのかといった情報をチーム内で共有することで、効率よく作業を進めることが出来ます。
■それってお願い? ただの業務連絡では済まされない事例
同じ会社の社員であれば、勤務状態を確認することに何の問題もありません。
しかし、客先のオフィスで作業をおこなう客先常駐や、案件ごとに契約をする業務委託、派遣などと言った雇用形態の場合、軽い気持ちで勤務状況の連携をお願いしたはずが、会社間のトラブルに発展してしまうなんてことが起こり得てしまいます。
勤怠連絡の扱いが雇用形態の線引きに直結してしまうことがあるのです。
特にSier業界は先にあげたように、
- 一次受け
- 二次受け
- 業務委託
- 派遣
- 客先常駐
といった複雑な構造が絡み合うため、ちょっとした言い回しが法律的な誤解を生むことがあります。
■業務効率化のための「お願い」が、まさかの抗議に
あるプロジェクトで一次受け企業の社員が、業務委託先の二次受け企業のメンバーと協働していました。そのプロジェクトではリモートワークやフレックス勤務を推奨しており、メンバーがそれぞれの都合に合わせて働いています。
しかし、
- いつ作業を開始したのか
- いつ連絡がとれるのか
- どの時間帯なら会議を設定できるか
がわかり難くなり、業務調整に支障が出てきてしまいました。そこで一次受け側は、「日々の勤務開始時間と終了時間を共有してほしい」という旨のチャットメッセージをお願いのつもりで送信。
しかし、返ってきた返信は、「派遣契約と同じことをやらせようとしている」、「業務委託に対して勤怠管理を求めるのは偽装請負だ」という、予想外の反応でした。一次受け側としては、指揮命令をするつもりはなく、あくまで業務効率化のための情報共有の目的で、チームとしての連携を取りたかったという意図でした。
ところが、チャットの文面が命令的に見えてしまったことで、二次受け側に「勤怠管理=指揮命令」と受け取られ、偽装請負を疑われてしまったのです。
■なぜ誤解が起きてしまうのか
このトラブルの本質は、契約形態ごとの「線引き」が曖昧になりやすい点にあります。それぞれの契約形態では、働き方について関与できることとできないことが違います。
①業務委託(請負・準委任)
- 成果物や作業範囲に対しての契約であり、勤務形態は契約内容の範囲外
- 一次受け企業による勤怠管理は原則NG
- 作業内容に対して指揮命令をしてはいけない
- 作業時間は委託側の裁量で取り決める
②派遣
- 労働力を提供する
- 勤怠管理は派遣先(一次受け)が行う
- 指揮命令は派遣先(一次受け)が実施する
このケースでは、「勤務開始・終了時間を教えて欲しい」という文面が、「こちらの会社であなたの勤務を管理します」というニュアンスに見えてしまったのです。
つまり、意図は「情報共有」でも、表現が指揮命令に見えてしまったという誤解を生んだのです。
■偽装請負は疑われるだけでも危険!
そもそも偽装請負とは何か、厚生労働省では、以下のように説明されています。
偽装請負は、一般に、
- ① 実態として、労働者派遣事業であると判断されるもの(労働者派遣法に違反)
- ② 個人事業主への適切な再委託ではなく、その実態から当該個人事業主が労働基準法上の労働者であると判断される等、契約の形式と実態に不一致があるもの
労働者派遣事業と請負とでは、労働者の安全衛生の確保、労働時間管理等に関して、雇用主(派遣元事業主、請負事業者)、派遣先、注文主が負うべき責任が異なっています。
これに違反していると判断された場合は、企業への行政指導や契約の見直し、プロジェクトの停止といった重大な影響を及ぼす可能性があるのです。そのため、二次受け企業が敏感に反応するのは当然とも言えます。
特にリモートワークにおいては、勤怠や作業状況の不透明さ、受け取り手の印象に左右される文面での連携といった要因が重なると、誤解が生まれやすくなってしまうのです。
■お願いと指揮命令の境界線を意識して
このようなケースが発生しないようにするためには、どうすれば良いのでしょうか。
対面での交流が少ないからこそ、伝えたいことは誰が読んでも理解できるような文章で連絡をするということを重視する必要があります。チャットやメールの文章では、口調の方さが命令形に見えてしまったり、要点のまとまらない長文は文脈が伝わらないといった弱点があります。
伝えたいこととその理由を簡潔にまとめ、「お願いいたします」「共有いただけると助かります」などといった柔らかい表現を意識するだけで、誤解を招くリスクが減ります。
NG例:
- 「勤務開始時間を教えてください」
- 「今日は何時から作業できますか?」
- 「朝会には必ず参加してください」
OK例:
- 「連携のため、作業可能な時間帯を共有いただけると助かります」
- 「本日のコミュニケーション可能な時間帯を教えていただけますか」
上記のように、業務に必要な情報共有として表現することがポイントです。
また、契約形態ごとの線引きをチーム全体で把握し、どこまで依頼できるか、どこから指揮命令になるのかといった情報を個々人が把握することで、未然に発生を防ぐことも可能です。
■コミュニケーションの仕方ひとつで、働きやすさを向上できる
リモートワークやフレックス制が当たり前になった今、ひとりひとりの働きやすさが向上した半面、コミュニケーションの取り難さが課題となることも増えてきました。
顔の見えない相手だからこそ、言葉の選び方、契約形態や立場に対する理解、情報共有の仕方といった課題が発生してしまうことも。コミュニケーションのとり方を見直すことで、チームとしての働きやすさも改善していくことができるかもしれません。
これを機に、皆さんもぜひ日々の業務でチームとのやり取りを円滑に進められるよう心掛けてみてください。
<引用元>「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」について|厚生労働省
執筆者:オカメインコ





